欠乏が思考を奪う:うまくいかない原因は余裕のなさにある ー欠乏の行動経済学②ー

前回まで。


前回はどんな欠乏だろうと最終的な人間の行動は同じようなものという話をしてきました。

今回はさらに欠乏を掘り下げていきましょう。


欠乏がもたらすメリット

  • 制限や期限が素晴らしいクリエイティブにつながることはある
    • 何かしらの成果物を作り出さなければいけないという、プレッシャーがなければ何も生み出せないまま終わるかもしれない
  • 欠乏は人の能力を高める
    • 一つのことに心が占拠されていると、人は持てるものを効果的に使用することに集中する
    • しかしこれには代償がつく

期限は欠乏を生み出す

  • 実際に研究でも期限が決められているほど高い生産性が生み出されることがわかっている
    • 会議では残り時間が少ないほど本質的なことに議論が費やされる
    • 大学生活を残り少ないと感じている学生ほど有意義に時間を使える
  • マーケティングにも使用されている
    • 期限のないクーポンよりも期限のあるクーポンの方が使用される確率は高い
  • 締切は欠乏を作り出し集中力を上げる
  • 仕事でもプライベートでも限られた時間のほうが得るものが大きい

トンネリング

  • 欠乏はトンネリングを引き起こす
    • 欠乏の対処以外に注意が向けられない状態
  • 根底にあるメカニズムを目標抑制と呼ぶ
    • 重要な目標について考え出すとそれ以外の目標は抑制され考え付かなくなる
    • 欠乏は大きな目標をうみ、それが他の目標や検討事項を抑制する
  • 欠乏は無意識のうちに心を占拠する
    • 故に慎重に検討すれば何に集中すれば最も良いのかがわかるのだが、検討を行わずただ欠乏の対処を行う
  • トンネリングはメリットにもデメリットにもなり得る
  • トンネリングはマルチタスクへの誘惑を伴う
    • 早くやろうとして複数を同時進行してしまう

欠乏は処理能力に負担をかける

  • 計算能力、注意を払う能力、決断力、計画力など包括的な能力
  • 騒音の学力への影響
    • 小学6年生を対象に列車の騒音にさらされているクラスと静かなクラスを比較すると騒音クラスはおよそ1年分学力が遅れていた
    • 防音パッドを導入すると遅れた学力の差は無くなった
  • 騒音によって注意が断片化して集中できない
    • これは騒音だけでなく心配事でも同様
  • 内因性混乱
    • 内面の試行が認知機能に大きな影響を及ぼす
  • 欠乏は内因性の混乱を生む
  • 締切に近い仕事が終わっていないのにMTGを入れられても全く身が入らないとか
  • 欠乏状態にある人は認知機能が低下し、自己を制御する力も弱くなる
    • だから忙しいときに他人にきつく当たってしまったりする
  • ダイエット中の人はおしなべて認知テストの成績が悪い
    • ダイエットに関する関心事が常にある影響

人は欠乏のせいで莫大な借金を抱えたり、投資しそこねたりするだけではない。生活のほかの面でもハンディキャップを負うことになる。まぬけになる。衝動的になる。使える処理能力が減り、少ない流動性知能と実行制御力で、なんとかやっていかなくてはならない──生きるのはさらに大変になる。

というわけで欠乏にはメリットがありつつも、それを上回るくらいのデメリットがあるのだと。
一時的であったり、程よい欠乏感は対象に対してリソースが割かれている状態なので、その分生産性が上がって良いのでしょう。
しかし、どうしようもないこと(お金が足りない、そもそも無理難題)だったりすると欠乏による集中力UPでも解決できず、他の面での認知能力が犠牲になってしまうと。

自分は今欠乏状態にあるか?その対象は自分で解決可能だろうか?という視点は持っておくと欠乏に囚われていても客観的に把握できるかもしれないですねぇ。



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